潰瘍性大腸炎とは
潰瘍性大腸炎とは、消化管の粘膜で慢性的な炎症を生じている状態です。 明確な原因は分かっていません。有効な治療法もなく、症状と上手く付き合うことが治療法です。 潰瘍性大腸炎は、20代に発症しやすいといわれています。厚生労働省が定める指定難病疾患であるため、難病医療費助成制度を利用できます。
潰瘍性大腸炎の症状
- 熱が出る
- お腹の痛み
- お腹の下辺りの違和感
- 貧血がある
- 体重が減る
- 下痢や粘血便、血便 など
症状の度合いは、周期的に変化します。自己判断で治療を止めないように気をつけましょう。
似たような症状がある疾患
潰瘍性大腸炎は、細菌性赤痢やサルモネラ腸炎、クローン病等の症状と似ています。
細菌性赤痢とは
細菌性赤痢とは、腸管感染症を指します。潜伏期間は、1~5日ほどです。その後、発熱や腹痛、下痢等の症状が現れます。
細菌性赤痢は、海外への渡航中に感染するケースが多いです。また、細菌に汚染された食べ物を摂ったり、二次感染した場合にも発症します。
サルモネラ腸炎とは
サルモネラ腸炎は、サルモネラに汚染された食べ物を摂ることにより発症します。さらに、鶏卵や食肉から感染したり、人間やペットとの接触感染もあります。発熱や吐き気、嘔吐、腹痛、下痢等が3〜4日ほど続きます。
潰瘍性大腸炎の原因
明確な原因は分かっていません。自己免疫疾患との関わりや大腸粘膜を白血球が攻撃している、遺伝性、腸内細菌叢の変化、食習慣等が関係しているといわれています。
潰瘍性大腸炎の検査方法
血液検査や腹部エコー検査、腹部レントゲン検査、大腸カメラ検査、便培養等があります。潰瘍性大腸炎を診断する上で、大腸カメラ検査は必要です。この検査では、炎症具合等を観察します。さらに、詳しく検査を行う必要があれば、病理組織検査を受けていただきます。
診断する上でのポイント
クローン病との鑑別
潰瘍性大腸炎では、腸管の炎症は大腸に限られています。また、まれに穿孔を生じます。一方、クローン病は大腸以外の腸管にも、飛び飛びで病変がみられます。また、虹彩炎や口内炎、関節炎、痔ろう等も現れることがあります。さらに、穿孔を生じやすいです。
細菌性の大腸炎との鑑別
潰瘍性大腸炎の確定診断を行うためには、類似疾患との鑑別が必要です。
細菌性赤痢やサルモネラ腸炎等を除外します。細菌感染しているかどうかを生検で判断します。
重症度分類
血液検査を行い、重症度分類の項目にある貧血や赤沈を確認します。
なお、難病医療費助成制度の対象になるのは、血液検査を受けて中等症以上の潰瘍性大腸炎と診断された場合です。
潰瘍性大腸炎の治療方法
明確な原因は分かっておらず、有効な治療法はありません。治療は、症状と上手く付き合っていくことになります。
また、症状の度合いは周期的に変化します。完全に治ることはないため、自己判断で治療を止めないようにしましょう。
潰瘍性大腸炎の治療
ステロイドや免疫調整剤、5-アミノサリチル酸製剤、坐剤、注腸製剤等による治療を行います。
症状が改善しない場合には、血球成分除去療法や抗TNF-α抗体製剤、外科手術等を検討していきます。
難病医療費助成制度
難病医療費助成制度とは、国が医療費を助成する制度です。
厚生労働省が定める指定難病の重症度により、難病医療費助成制度を受けられるか決まります。
この制度を受けられると、自己負担額が減ります。ある程度症状のある方が対象になっています。
ただし、症状が軽い場合でも軽症高額該当により、自己負担額が減る可能性があります。診断基準と重症度分類は、疾患ごとに異なります。
潰瘍性大腸炎については下記の通りです。
診断基準
a)のほか、b)の中で1項目、およびc)に該当する必要があります。特定の疾患を除外した後に、潰瘍性大腸炎の診断ができます。
- a)臨床症状:反復性もしくは持続性の粘血や血便を生じている。これまでにこれらの症状が出現していた。
- b)
①大腸カメラ検査:
i)血管透見像は消えている。細顆粒状もしくは粗ぞうが確認できる。接触出血がある。粘血膿性の分泌物が付いていることが確認できる。
ii) 潰瘍もしくは偽ポリポーシス、多発性のびらんを確認できる。
②注腸レントゲン線検査:
i)細顆粒状もしくは粗ぞうのびまん性変化がある。
ii)潰瘍や多発性のびらんを確認できる。
iii)鉛管像が消えている。偽ポリポーシスや腸管が狭く小さいことが確認できる。 - c)生検組織学的検査:活動期は、陰窩膿瘍やびまん性炎症性細胞浸潤、杯細胞の減りが確認できる。
これらは、総合的に判断する必要がある。寛解期は、腺が蛇行や分岐します。また、萎縮が残ります。
一般的に直腸から口側に出現するといわれています。
b)c)の検査では判定できない場合は、手術もしくは剖検を行います。
潰瘍性大腸炎の所見が確認できる場合は、確定診断のために下記の疾患を除外します。
除外疾患:細菌性赤痢、アメーバ性大腸炎、キャンピロバクタ腸炎、クラジミア腸炎、サルモネラ腸炎、大腸結核、クローン病、虚血性大腸炎、
腸型ベーチェット、放射線照射性大腸炎、薬剤性大腸炎、リンパ濾胞増殖症等。
重症度分類
潰瘍性大腸炎は、重症・中等症・軽症に分類されます。難病医療費助成制度を受けられるのは、中等症以上です。
重症 | 中等症 | 軽症 | |
---|---|---|---|
1.排便する回数 | 6回以上 | 重症と軽症の間 | 4回以上 |
2.顕血便 | (+++) | 重症と軽症の間 | (+)~(-) |
3.発熱 | 37.5℃以上 | 重症と軽症の間 | 37.5℃以上の熱は出ない |
4.脈拍 | 90分/以上 | 重症と軽症の間 | 90分/以上の頻脈なし |
5.貧血(ヘモグロビン数値) | Hb10g/dL以下 | 重症と軽症の間 | Hb10g/dL以下の貧血なし |
6.赤沈 | 30mm/h以上 | 重症と軽症の間 | 正常値 |
軽症:1~6全て当てはまる
中等症:重症と軽症の間
重症:1および2に加え、3もしくは4のどちらかに当てはまる。6項目中4項目に当てはまる。
軽症高額該当
重症度分類で軽症に当てはまっていても、長期的に治療を行う必要がある場合は、軽症高額該当の対象になることがあります。
こちらも、自己負担額が少なく済みます。
対象者
軽症高額該当の対象になる方は、医療費助成の申請月から12ヶ月前までの期間中に、1ヶ月の医療費の合計金額が33,330円を超える月が3回以上ある場合です。ただし、診断から12ヶ月経過していない場合は、指定医が診断した月から申請月までの間に、1ヶ月の医療費の合計金額が33,330円を超える月が3回以上ある必要があります。分からないことがありましたら、医療機関に問い合わせましょう。
よくある質問
潰瘍性大腸炎とクローン病はどこが異なりますか?
両疾患とも消化管の粘膜で炎症を生じる病気です。しかし、それぞれ病態が異なってきます。潰瘍性大腸炎では、大腸の粘膜で炎症を生じます。
さらに、潰瘍やびらんを起こします。一方、クローン病は全ての消化管において炎症や潰瘍を起こします。
潰瘍性大腸炎ではどのような症状が現れますか?
よく出現する症状は、便の異常です。初期段階は、血便を生じます。さらに進行すると、腹痛や軟便、下痢を起こします。
潰瘍性大腸炎と合併する疾患を教えてください。
アフタ性口内炎や関節炎、静脈血栓、大腸がん等を合併する可能性があります。
また、腸管の狭窄や閉塞、穴が開く、多量出血を起こすこともあります。
潰瘍性大腸炎の治療に用いる薬剤に副作用はありますか?
ステロイドの副作用は、ムーンフェイスや体重が増える、感染症、不眠等です。
免疫調整薬の副作用は、血液障害や感染症等です。
5-アミノサリチル酸製剤の副作用は、頭痛や吐き気、腹痛、アレルギー反応、発疹、下痢等です。
副作用が現れましたら、速やかに消化器内科を受診しましょう。
腫瘍性大腸炎の症状を改善するために、手術を受けたほうが良いですか?
薬物療法等で症状改善を期待できない場合は、手術を検討していきます。
近年、医療の発展に伴い、新薬の開発も進んでいます。将来的には、腫瘍性大腸炎の手術件数は減るといわれています。
日常生活で注意しておいたほうが良いことはありますか?
日々の食習慣が大切です。動物性脂肪は、潰瘍性大腸炎を悪化させてしまう可能性があります。
日頃から乳製品やバター、肉類、刺激物の多い食べ物、アルコールを控えるようにしましょう。
また、潰瘍性大腸炎の悪化には、ストレスも関係しているといわれています。
自分なりのストレス解消を見つけることが大切です。
また、一定の睡眠時間を確保することも心がけましょう。気になることがありましたら、消化器内科を受診してみましょう。
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